2021.09.01 ヴィンテージ生地を仕上げる
特別な“下処理”
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最近、ヴィンテージ生地を取り扱うお店が増えてきており、業界全体が盛り上がればと、大変喜ばしく思っています。しかし、私の目から見ると少し残念だと感じることがあります。

 

それはヴィンテージ生地の下処理ができてないのでは?そもそも下処理をするという考え自体がないのでは?と思うのです。ジェントリーで使用する生地は、スーツやジャケットに仕立てる前に綿密な下処理を行っています。というのも、ヴィンテージ生地はその古さゆえに、油分が抜けてしまっていることが多いのです。そのままでは肌触りが良くありません。皆さんもチクチクしたり、ゴワゴワした質感を感じたことはないでしょうか?

 

そんな状態の生地をしっかりとメンテナンスしてあげることが大切。決して簡単な方法ではありませんが、ヴィンテージ生地と長年向き合ってきたことで、どうすればより良い状態になるのか、そしてどんな処理をすれば良いのかがわかるようになりました。すこし大げさに言えば、私だけが編み出した特別な処理を施していくのです。

年代や保存状態によって、ヴィンテージ生地の状態は千差万別です。手で触ってみて、どのくらいメンテナンスをした方がいいのかを判断します。「この生地ならこうしよう」と、感覚と経験から判断します。その判断に応じて、独自の方法で下処理を行います。この処理が出来ていない生地を多く見かけますが、本当にもったいないなと思います。

確かに手間がかかる作業なのですが、私はこう考えます。クラシックカーが好きな方が、昔の車をそのままの状態で乗るでしょうか? 塗装がはがれていれば塗り直し、内装もきれいにするはずです。それはヴィンテージ生地も同じではないでしょうか。そこで大切なのは、生地の持つ空気感を損なわないことです。当時の空気を感じさせながらも着心地や見た目をリペアする。それが私の仕事であり、プロとしてのこだわりです。ただ、ひとつだけご理解いただきたいのは、決して新品と同じようになるのではないということ。まっさらな状態ではなく、ヴィンテージ生地ならではの風合いは残しています。

 

ここ数年、ヴィンテージ生地はとても注目を集めるようになってきたように感じます。そんな時流に流されすぎず、本当に良いものをご提供していきたいと思います。